2010年6月26日土曜日

「サービスを送る」ビジネス①

ここ数年もてはやされているマイクロファイナンスが、マイクロクレジット(小額貸付)だけではないことは前に少し書いた。銀行などの既存の金融機関が、大多数の人のニーズに応えられないこと、、ディアスポラ(移民、出稼ぎ移民)からの送金が、いかにこの大陸において大きな存在であるのかということ、また、送金の思わぬ落とし穴についても、既に書いたとおりだ。

ディアスポラを通した社会貢献型のビジネスが注目されるようになってから久しいが、そんな中でも私の会社はユニークだ。ヨーロッパやアメリカにいるアフリカ系のディアスポラが、送金の代わりに、医療や教育などのサービスをアフリカに残る家族に提供できるようにしているからだ。送金で送られたお金を、もっと有効的に使ってもらいたい―そんなディアスポラのかねてからの願いを、カタチにしたのがこの会社である。(送金の落とし穴についてはこちらをどうぞ。)

例えば、私の会社では、ディアスピラやアフリカに住む人々を対象にしたオンラインショップを運営している。アフリカの内外で暮らすディアスポラがお金を払い、それをアフリカ各国にいる家族がすぐに受け取れるシステムだ。こうすることで、例えばフランスにいるAさんはアフリカにいるBさんの必要なものを直接買ってあげることができる。送金してしまうとお金の使用用途が不透明になってしまうから、Aさんにとってはこの方がありがたい。また、「○○を買いたいのにお金がない!!」「今月は給料が支払われなかった!!」「月末でお金が残っていない!!(お金は計画的に使いましょうという話だが、計画しようにも計画通りにはまずいかないのがTIA)」など、なにかとすったもんだすることの多いアフリカだ。そのため、Aさんがヨーロッパで直接支払いを行うことで、Bさんのためにより簡単でスムーズな買い物ができる。

オンラインショップでAさんが買う商品は、Bさんの暮らす国の地元の店舗や企業の商品・製品であるため、地元の経済のためにもプラスになる。つまり、それこそ本当に、Aさんはフランスにいながら、アフリカで買い物ができるサービスになっている。私の会社がそれぞれの地元店舗・企業と交渉を行うため、オンライン上では実際の店舗価格よりもやや低い値段で買い物をすることができる。これは、ディアスポラだけではなく、インターネットにアクセスできるアフリカの人にとっても嬉しい特典だね。みんな忙しいからなかなか買い物をする暇がないけれど、オンラインショップならいつでも買い物をし、家まで届けてもらうことが可能なだけでなく、実際のお店よりも安いわけだから。

地元の店舗・企業にしてみたら、地元の顧客層の増加はもちろん、海外にまで市場が広がるいいチャンスだ。アビジャンのようにだだっ広く、交通渋滞が激しく、そして市民が割とレイジーな街では、自分の生活圏内を越えた買い物をする人はそう多くはいない。(まぁ、どこで買い物してもお店や品質には特には差がないっていうのもあるんだけどね。)また、何かと情報が錯綜しているTIAなこの街において、注目のお店やレストラン、イベントなどの情報を集めた街情報誌があるハズもない(あるのは口コミと新聞広告ぐらい)。そのため、お店の立地を生活圏内としないアビジャン市民に新しい顧客になってもらうことは、それだけで地元の店舗や企業にとって大きな利益になる。ましてやそれが海外にまで広がるとなれば、決して悪い話ではないハズだ。

特に電化製品は、アフリカでは本当に高い。だから今は、フランスから誰かが来るたびに、あるいは誰かがフランスに行くたびに、持ち運びをしている人が非常に多い。このままだとアフリカの地元の商売も上がったりだし、空港の税関での汚職が終わることもない。そういう意味でも、このオンラインショップは決して悪いアイディアではないと思う。

アフリカの人がオンラインショップで買い物をする際には、現金払いでも、銀行口座のカードでもOK。特に今は、Africardというプリペイド式カードがVISAから出ていて、じわりじわりと浸透しているから、アフリカのビジネスも大きく変化してきている。Africardもマイクロファイナンスの一環と言えば一環だ。最初にお金を積み立てて、それをクレジットカードの代わりに使うことができるのだ。これなら、銀行口座をもてない人でも大丈夫だね。

このオンラインショップから、私はコートジボワールのビジネスや消費の傾向について、色々学んでいる。文化の違いっていうのはこんなところにも現れるのか!!と、いつも新しい発見があるよ。

例えば、クリスマスやラマダン明けのための玩具。福袋のように、「5000フランのパック」「20000フランのパック」といった形で売り出しているのだが、それぞれのパックの中には、3歳児用の玩具も、8歳くらいの女の子向けの玩具も、10歳くらいの男の子向けの玩具も、全部ごちゃ混ぜになっている。私は最初、この案には反対した。こんなに統一感のないものばかりがごちゃごちゃと入ったパックは、誰がターゲットで売り出すつもりなの?―これが明確でなかったからだ。値段をそろえれば、何でもかんでもパックにして売り出せばいいというものではないしね。

ところが、象牙人の私の同僚は、全員口をそろえてこう教えてくれた。ここの人はそもそも、みんな大家族だ。そのため玩具とは、一つが一人に与えられるのではなく、いとこやはとこ同士を含む大家族みんなで共用するものと考えられている。だから、一回の贈り物でなるべく多くの子どもたちを喜ばせられる方が、消費者のニーズに合っているのだ、と。

大家族なんだし、こんなの当たり前といえば当たり前の話だけど、これを聞いたときには目からウロコだったなぁ。

結局これは実現されなかったけれど、イスラム教の犠牲祭の前には、ヤギをオンラインショップで売ろう!!などという話も飛び出した。今はクリスマスに向けて、鶏やら大量の食べ物のパックを売り出している。パーティや親戚同士の集まりが大好きなアフリカの人にとって、これはどんなモノよりも最高のプレゼントだ。ディアスポラもそれを理解しているから、結構売れるんじゃないかな。

もちろん、コートジボワール(というか、一般的に途上国)ならではの難しさもかなりあるよ。

まず、信用の問題。例えば、十二月に売れた商品分のお金は、翌月である一月の決められた日に、私たちの会社から地元の店舗・企業に納入される。この後払い制度がなかなかやっかいで、信用を得るのが非常に難しい。ここでは、何でもその場で支払うのが当たり前だからね。そうでないと、逃げたり、しらばっくれて支払いを拒否する個人や業者が後を絶たない。基本的に、信用というものが社会の中に存在しない。だから携帯の通話料も、後払いではなくプリペイドなのだ。たとえ私たちの会社の本部がパリにあろうと、アフリカ各国で事業を展開していようと、アフリカサッカー界のスターが経営に関わっていようと、信用のない不安定な社会で信用を得るというのは、難しいことだ。本当に根気が必要だね。

コートジボワールでは、細かい書類を準備して会社の信用性を証明しようとするのよりも、メディアにさえ露出していれば、「お宅は信用できる会社ですね~」という感じになってしまうらしい。これ、ものすごくTIAで面白いなと思った。難しいこと言われてもよく分からないから、とにかく目立てばいいんです!!みたいなね。思えば、マケレレの学内選挙のときも、「演説や政策で勝負!!」というよりは、「お金とコーラをばら撒いて、あとはひたすら音楽をガンガンかけて踊りまくる選挙活動をすれば、勝てる」といった具合だったなぁ。

私たちの会社の本部がシャンゼリゼ通りにあるのも、そんなTIAの心理をよく理解してのことだ。パリにいた頃、私はどうして本部がこんなところにあるのかが理解できなかった。シャンゼリゼ一帯のあの辺は、かなり高いはずだ。それなのに・・・なぜ?私たちの会社はまだまだ小さいのだから、同じパリでももう少し安いところに本部を構えればいいのに。何もかもがよく分からないような環境にポーンと放り込まれていた(というか、自分でポーンと身投げしたと表現したほうが正しいね)私は、「身の丈にあっていないことを好むところがマジTIAだな、この会社は大丈夫なの?」とすら考えては一人でイライラしていた。

社長の思惑がようやく理解できたのは、コートジボワールに来てからだった。ここでは、私たちの会社のことを知らない人に対して説明をする際、必ず本部の住所を言っている。すごいよ。「パリ8区シャンゼリゼ」と言っただけで、水戸黄門の印籠のように、今まで面倒くさそうな態度を見せていた人々がハハァーとなるからね(笑)。パワポの会社プレゼンには、資本金やら従業員数などの必要不可欠な会社概要は登場しないくせに、二枚目には早速シャンゼリゼの文字が登場する。初めての相手に電話をするときの手短な自己紹介でさえも、「○○社の△△と申します。私たちの会社は#%*@で本部はパリのシャンゼリゼにあります。」というように、ここで本部の住所を言うのか!?というツッコミをせずにはいられない感じなのである。

「本部がシャンゼリゼにあるからなんなの」くらいの態度を、是非是非アビジャンの人々には見せてもらいたいんだけど・・・なんてたって見せつけ主義&見せつけられたらペコペコする主義が蔓延しているから、なかなかそうもいかない。

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