2010年6月4日金曜日

コートジボワールの嫉妬と呪い

去年の十二月上旬、シャカとマリーが私たちの家に突然引っ越してきた。ちょうどその頃私はマラリアにやられており、朦朧とする毎日を過ごしていたため、最初はてっきり、二人が私の看病のために一時的にやってきたとばかり思っていた。

この二人は、引っ越してくる前から我が家に結構遊びに来ていた。お互いのことはもうよく知っていたので、彼らが引っ越してきても違和感は何もなかった。二人は、アビジャンから車で一時間半くらいの村に住んでいたんだけど・・・どうしてまた急に我が家に来ることになったんだろう?

マラリアが治り、普通の会話ができるようになったところでその質問をしてみると、こりゃまたTIAなぶったまげアンサーが返ってきた。感情的になって最初に答えたのはマリー。出生届のすったもんだのせいで、「実際は二十六歳なのに書類上は十八歳」な女の子だ。

「このまま村にいると殺される!!私たちの命が狙われているの!!」

アフリカでは、呪術や伝統医療というものが強大な力を持っている。前回のキベキのところに少し書いたが、スピリチュアリティーが人々の生活や社会に与える影響は大きい。そして、ちょっと気に入らないことがあると、悪霊を人の体に投げ込んだり、呪いをかけたりする人が結構いる。魔女狩りも健全だ。これは冗談ではないよ。

よくあるのが、人の顔やら身体を変えてしまうものだ。新聞を読んでいるとよくあるね。「ブタになった女性」だの、「口が突然ひんまがってしまった子ども」だの。それから、信じられないかもしれないけど、とある人の目の精霊(視力)に影響を与え、実際の目がある場所ではなく、後頭部や耳のところにその精霊を動かしてしまう・・・なんていう方法の呪いもあるみたい。どういう状態に陥るかというと、顔に目はあってもそこにはもう目の精霊はおらず(そこからものを見ることはできず)、代わりに、目の精霊が後頭部に移動させられる(なにもないはずの後頭部から、ものを見るようになってしまう)・・・ということね。彼らは、目そのものには見る力はないと思っているの。おもしろいね。

突然ブタの顔になってしまった、フローレンスさんという女性の記事。




私は一度、コートジボワールの小さな町の市場で水を売っていたおばちゃんがあまりにもしつこいものだから、怒って「水なら買わないってさっきから何度も言ってるでしょうが!!!」と言ってしまったことがある。そのとき、おばちゃんが何かを私に言ったのだが、一緒にいた友達曰く、そのおばさんは悪い精霊が私の邪魔をするように、おまじないの言葉を吐き捨てたらしい。そのせいなのかな?その日は車の故障やら渋滞やらで、アビジャンに帰り着くのにとんでもない時間がかかってしまった。

マリーがヒステリーを起こしてしまうのも分からなくもない。シャカがマリーに何が起きたのかを説明してくれた。マリーはその前の週に村で料理をしていたところ、突然倒れてしまったらしい。そして、高熱に数日間うなされ、挙句の果てには病床で叫び出すようになったのだとか。「これはただ事ではない・・・これは悪霊に違いない!!このままでは、あと二日もしないうちに彼女は死んでしまう!!」というワケで、悪霊の除去をする力のある家系出身であるフィリップが家に呼ばれた。

と、ここまで聞いたときに私がツッコミたかったのは、フィリップのことだ。私も何度か村には遊びに行ったことがあったため彼のことは知っているが、いつも、人の話を聞いているのか聞いていないのかよく分からないような感じの人なんだよね。突然イミフなことを会話の途中で切りだしてきては、私を翻弄させる中年のおじさんこそ、私の知っていたフィリップだった。「フィリップって、あのフィリップでしょ?そんな家系の出身だったの!?意外すぎるんだけど(笑)」

フィリップは、普段はあんなだけど、村の人にとっては大切な存在なんだって。村の人たちは、普段は仲良くしているように見えても、そこはやはり狭いコミュニティー。こういった、呪いをかけてしまうだとか、悪霊を誰かの中に投げつけてしまうだとかいうことは、かなりの頻度で起こるらしい。ちょっとした事が大騒動につながったり、嫉妬の炎が水面下でメラメラ燃えていたり・・・。コテコテで深い人間関係こそ、田舎やアフリカの大きな醍醐味であり、魅力でもある。ただ、やはり私は、長期的に住むなら、もうちょっとさっぱりとした人間関係のある場所のほうが気が楽でいいかなぁ。

ただ、悪霊にもいろいろな種類があるから、フィリップが除去できるものとそうでないものが当然あるみたいだけどね。

マリーが狙われたのも、村人の誰かが彼女に嫉妬していたからだ。

Binguiste(コートジボワールのフランス語で、「ヨーロッパから来た人・帰ってきた人」という意味)であるシャカは、コートジボワールに十五年ぶりに戻ってきた際、ある程度予想はしていたが、村の人たちの「金くれ攻撃」に辟易してしまった。でも、やはりそこは、アフリカ男の気質に満ち溢れている彼だ。最初だけは、村の人にお金を少しだけばらまいたりしていたらしい。コートジボワールでは、お金のある人がこういうことをするのは当然のことと見なされているから、お情け頂戴に負けてお金をあげたとか、慈悲に満ちた施しというよりは、シャカはシャカなりに、男としてのけじめを見せたかったんだね。

それでも、やはりだんだんと村の人との物質主義的な関係に疲れてきて、彼らとの距離を置くようになったシャカ。そんな中で、幼馴染であり姪っ子であるマリーとよくつるむようになったのは、彼女が唯一、お金とか関係なしに、本当にシャカと仲良くしたがっていたからなんだって。「マリーが唯一の」って、喜んでいいのか嘆かわしいことなのか・・・。ところが、いつも一緒にいる二人を見て、村の人はマリーがシャカからお金をもらっていると勝手に判断。本当は何も貰っていない彼女からお金をせびり始めたから、今回の騒動は始まった。

もちろん、そんなの火のない煙なワケだから、マリーにしてみたら迷惑な話だ。「お金なんてもらってない」と言い続けても、村の人には「コイツは俺たちと、シャカからもらっているお金を共有しようとしない!!」というように勝手に解釈されてしまう。そして、挙句の果てがこの呪いだ。

ウガンダにいたころ、とんでもない(と当時は感じたが、今となっては普通すぎて特に驚かなくなった)話を聞いたことがある。とあるNGOが、ある村人の鶏小屋の改築だか何だかをしてあげたのだそうだ。といっても、ある特定の個人に対してあからさまな援助活動を行うと、コミュニティー内の人間関係に良くないことなど初めから予想がつくことなので、この鶏小屋のエピソードでは

1.この人が本当に経済的に困窮しており、助けを必要としていた
2.そのNGOが行うプロジェクトで結果を出したから、ご褒美のような形で鶏小屋を改築してもらった
3.その0NGOが単なるおバカなNGOで、援助のその後のその後まで考えないで鶏小屋を改築してしまった

のどれかが実情だったに違いないけど。この結果、今まで(表面上は)仲良くしていた近所の人が嫉妬のあまり、せっかく改築した鶏小屋を放火したというのだから、村社会の嫉妬文化はある意味非常に恐ろしい。

マケレレの学生寮でも、新しいスカートを見せびらかしていた隣の部屋の女の子のまさにそのスカートが、翌日何者かによって切り刻まれていた・・・なんてことがあった。以前にも「見せびらかす文化」について書いたが、目につく分かりやすいポイントというのは特に注意が必要だ。

話を戻そう。(いつも途中で話がそれてしまってごめんなさい)

フィリップが呼ばれると、マリーの治療(?)が始まった。すると、フィリップがマリーの尾てい骨付近に何かを感じ取った。そこにフィリップが口をあてて空気を口の中に吸い込むと、次の瞬間、マリーの肌をスッと通して、フィリップの口の中に小さな石が三つ入っていた。

と、ここで私は、自分のフランス語の会話力がまだまだ足りないがために「マリーの肌を通して」の部分を聞き間違えたのかと思ってしまった。ん??石が人の肌を通るって、どういうこと??

しかし、聞き間違えたのはどうやら私の方ではなかったようだ。本当に石が、肌を通してスッとフィリップの口の中に出てきたというのだから。そして、その瞬間今まで高熱にうなされながらも病床で叫び続けていたマリーが、急に大人しくなって眠ってしまったらしい。

私はその石とやらをこの目で見たよ。一円玉よりも少し小さいくらいの石が、本当に三つあった。この話を信じるか信じないかは人それぞれだと思うけど、シャカはこんな幼稚な嘘をつくようなタイプの人ではない。

シャカのお母さんはパリに住んでいるのだが、パリに住んでいる象牙人コミュニティー内でいざこざがあった際に、やはり異物を体の中に投げつけられたらしい。体調がすぐれない毎日が続き、病院に行ってX線検査をしたところ、お腹になにかの影がはっきりと写ったんだって。そこで、手術をすることになったが、開けてみると、医者は何も見つけることができなかった。仕方がないので、在仏象牙人コミュニティーの中でフィリップのような力を持っている人を見つけ、それを除去してもらったとか。

離れているところから、そんなものを投げつけられる可能性が高い・・・。おまけに、悪霊にもとりつかれるかもしれない・・・。

こういったことの存在を完全に信じることは私にはできないが、あるかないのかと聞かれれば、私はあると思っている。そう考え出すと大変だ。誰がいつどこでどのようにどのようなものを私に投げつけてくるかわかったもんじゃないから、もはや迂闊に、人の機嫌を損ねたりできないではないか!! ってことは、店のおばちゃんの態度が悪かろうと、しつこい人が道端にいようと、もうニコニコして黙っているのが一番・・・ってことになっちゃうのかな?

シャカやアウアやそのほか大勢の象牙人いわく、フランスの大統領がアフリカに来る際にも、彼らには彼ら専用の呪いを解く人(日本語で何て言えばいいのでしょうか)がつくらしいよ。フランスは相当恨まれてるからね。それをフランス政府も自覚しているからこそ、「大統領がこんなので暗殺でもされたら大変だ!!」というわけで、大統領のアフリカ訪問の際には、テロ対策のほかに呪い対策もされるんだって。事実かどうかは知らないけどね。

人間の信じる力というのはものすごいパワーを持っている。マリーやシャカのお母さんの例をあげると、彼女たちの呪いに対する「畏れの力」が強すぎたせいで体がそのように反応してしまったのではないかと私は思っている。アフリカだけではなく、こういうことは世界中いろんなところにあるしね。いつか、これを科学的に証明してくれる人が現れないかな。

多くの外国人は、こういった事象をを単なる「非科学的で原始的かつ子どもじみた迷信」の一言で片づけてしまうが、私は、それは間違っていると思っている。国際機関やNGOがプロジェクトをやる時も、こういった社会的・文化的事情を真剣に考慮した上でやっていかないと絶対に失敗する。

世界は面白い場所だね。まだまだ知らないことが多すぎる!!

1 件のコメント:

Md.monirul Islam さんのコメント...

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