2009年12月2日水曜日

国際メディアとパンアフリカニズム系のメディア

パリにいた頃、友達に「パリの次はコートジボワールに行くんだよ」と言ったら、みんな目を丸くして「ええ!?そうなの?大丈夫?」と驚いた。私には、彼らがどうしてそのような反応を示すのかがよく分からなかった。確かに、日本を出る前には、果たしてアビジャンの日本大使館が本当に存在するのかがよく分からなかったが、まぁとりあえずなんとかなるだろうなとは思っていたのも事実だ。コートジボワールが内戦をやっていたのは知ってるけど、今でも危ない状態なら、うちの会社がアビジャンに進出するわけがない。

今でもよく、象牙人と話をしていると、「この国に来るなんて、君は勇気があるね。メディアがコートジボワールのことをなんて言っているか知ってるのかい?」だとか、「戦争で国がボロボロになったっていう情報は聞いてなかったのかい?」だとか、まぁとにかく様々なことを言われる。私は、当然メディアのコートジボワール内戦に関する記事はいくつか読んできてはいたし、戦争が始まった2002年から数年間は、普段はアフリカなんか完全に無視している日本のメディアでさえ、コートジボワールの内戦について少しだけ言及しているのを知っていた。

日本から遠すぎるアフリカは、記事にしてもお金にならない。だから、当然アフリカ関係のニュースは、国際面の小さな小さな一角に、ごくたまに登場するのみである。TICAD(アフリカ開発会議)の後でさえ、それが変化したとは思えないから非常に残念である。

ただし、フランスのメディアは違う。過去にアフリカ大陸の多くの土地を、人を、資源を盗み、植民地の独立から現在に至るまで、仏語圏アフリカの影のボスとして君臨し続けているフランスは、大衆紙を読んでいてもアフリカの記事が日本よりも若干多い。RFI(フランス国際ラジオ)では、よくアフリカの話題が出てくるよ。これは、CNNやBBC、アルジャジーラに負けないため、フランス政府がマジになって頑張っているプロジェクトらしい。TV5という、RFIのテレビ版みたいなのもある。 なんでもいいけど、フランス政府、影響力を保持するのに本当に必死だね。

ところが、アフリカの知識人はRFIをほぼ信用していない。メディアは疑ってナンボだけれども、みんなこのRFIが、ただのフランスのプロパギャンダだということを知っているからだ。例えば、コートジボワールの内戦中に、アビジャンにあるフランス軍が泊まっていたホテルの前で、デモがあった。これは、フランスがいつも政治に干渉してくることに対する怒りや、フランスのせいで内戦が始まったことに対して、象牙人の怒りが爆発したかたちだ。ところが、このホテルの前でフランス軍は攻撃を開始し、死者がたくさん出た。RFIでは、これを「象牙人がフランス軍に対して攻撃を仕掛けてきた」というニュースとして、全世界に流したんだって。

こんなとき、強いメディアを持っていないアフリカの国にとってはかなり不利だ。フランスのメディアが国際世論を形成し、国連や、日本を含む各国政府をも動かしてしまう。

また、これらフランス系の国際メディアは、コートジボワールの内戦当時、内戦を針小棒大に国際社会に伝えた張本人たちだと様々な人が証言している。アマドゥは「RFIを聞いていると、いかにもコートジボワールの西部ではみんな人が殺されちゃったような感じがするけど、どこに死体があるんだよ!!っていう感じだったよ」と流暢な日本語で話してくれたし、パリにいた頃に仲良くなったイボリエンヌのイザベルちゃんは「戦争が始まる数ヶ月前に私はフランスに来たんだけど、ただでさえホームシックだったのに、テレビをつければアビジャンが激戦地状態になっているっていうじゃない!!もう泣いて泣いて家族に電話をしたわ。もう電話線も切られているかもしれないと思ったけど、お母さんはどうして私が泣き喚いているのかが、最初は理解できなかったみたい。アビジャンは平和で、本当にいつも通りのアビジャンだって言われても、最初は信用できなかった。テレビって怖いわね。とりあえずみんなが無事でよかったわ。」と言っている。

それでも(というか、そのせいで?)、多くのフランス白人のアフリカに対するイメージは散々なものだ。日本よりもアフリカの情勢に詳しい人は多くても、所詮は「世界の中心のヨーロッパ。そのヨーロッパをリードしているフランス。それに対して、世界の端の端であるのがアフリカである。」という視点からアフリカを見ている人が多いように思える。むしろ、アフリカのニュースをキャッチしているからこそこんな構図が彼らの中で自然にできているのかな。日本人みたいに、知らなければそんな構図すらできないもんね。当然、こんなことを大っぴらに言う人はイマドキいないが(少なくとも、私の短いフランス滞在期間中には、このような21世紀版植民地主義者には遭遇したことがない)、フランスにいるフランス白人とアフリカについて話すと、いつも腑に落ちない何かが感じ取れる。

ただし、旧仏領から様々な人が集まるパリは、アフリカ関連のメディア活動が世界で最も活発である街の一つだ。そもそも、パンアフリカニズムやら旧仏領アフリカの独立運動やらが生まれた場所は、植民地からのエリートが多く勉強に来ていたパリだったしね。そういう意味では、少し皮肉だと思う。イギリスの植民地主義とは違い、フランスの植民地主義は、ひたすら植民地のフランス化を目指したものだったのだから。その結果、パリという場所に送り込まれたフランス植民地のエリートは、そこで他の植民地からのエリートと出逢い、フランス語という言語を使って結束を深め、独立を目指していく。だから、当時のパリで『アフリカ人の、アフリカ人による、アフリカ人のためのメディア活動』が活発であったことは当たり前で、時代がめまぐるしく変化した現在でも、その伝統は生きている。

パリのソルボンヌ大学近辺には、Présence Africaineという、パンアフリカニズム系の本屋さんがある。日本の大学で私が尊敬するフランス語の先生から教えてもらった。残念ながら、三ヶ月もパリにいながらも、私はここに一度も足を踏み入れたことがない。そこに行ったところで、自分のつたないフランス語で何が理解できるのか、というのがそもそもの話であったし、平日は毎日ずっと仕事だったから、なかなか行く時間も見つけられなかった。週末はお店が閉まっちゃうしね。コートジボワールが終わったらパリに一週間ほど滞在する予定なので、そのときに行ってみようと思う。

Jeune Afrique という週刊誌は、そんなパンアフリカニズム系メディアの典型だと思う。これは、しいて言うなら、仏語圏アフリカ版のNewsweekみたいなものだ。モロッコやアルジェリア、チュニジアなんかの、北アフリカ地域も当然対象内だよ。影響力も大きいし、アフリカ系以外の読者層も幅広い。フランスでは、どこのキヨスクでもだいたい置いてあるし、ヨーロッパとアフリカでは、だいたいどこの国でも売られているみたいだね。

Jeune Afriqueは週刊誌。


この雑誌だが、結構面白いから私は好きだ。記事の内容も、中国のアフリカ政策からアフリカ系アメリカ人のニュース、アフリカ系ユダヤ人のルポタージュから、「コラム;素敵なラマダンの一日の過ごし方」なんてものまである。毎回必ず登場するにはサルコジのネタだ。まったく、フランスはいつになったら、アフリカから手を引くのだろうか。

Jeune AfriqueやAfrique Asieほどは大きくないけど、
ここの本屋さんには必ず並べられてるAfrique Education。
この刊では、ガボンのボンゴ前大統領の死について話してるね。


パリ時代に一緒に働いていたガボン出身のアレクシアちゃんは、フランスに勉強に来ている学生だ。パリにあるガボン学生のグループで、結構活発に政治活動(?)もやっているみたい。他のアフリカ人学生との交流も積極的に行われているのだとか。とはいっても、過激派なんかじゃないよ。もちろんアンチ・フランス、アンチ・ネオコロニアリズムですが。今年のガボンの大統領選挙の当日は、もちろん仕事は休んだし、その選挙でのフランスの介入に対しては本当に心のそこからブチ切れていた。普段はものすごく穏やかな子なんだけどね。そんな彼女はJeune Afriqueを愛読している。

この雑誌は、コートジボワールでも本当によく読まれている。

前に、「Les sectes à la conquête de l’Afrique(アフリカを支配するセクト)」という特集を組んでいたのだが、そこでは日本でもおなじみのアノ宗教団体がセクトとして紹介されていた。これに対し、この宗教団体のフランス支部長が、「読者からの手紙」のコーナーに抗議文を出していたんだよ。「ウチラはセクトなんかじゃない!!」から始まり、この宗教団体の歴史なんかを説明していた。

そういえば、話はガラっと変わってしまうが、この宗教団体の話を少しだけさせてほしい。ウガンダにいた頃、カンパラを歩いていたら、とあるウガンダ紳士に声をかけられた。「日本人ですか?」ってね。彼は非常に丁寧で礼儀正しいセボだったため、私も「はい、そうですが・・・」と答えた。私が日本人であると知るや否や、彼は、この宗教団体に関する質問を投げかけてきた。あまりにも不意打ちであったため、かなり焦ったけどね。この人は、最近ずっと心に迷いを感じていて、思い切ってこの宗教団体に切り替えようかどうか悩んでいるらしかった。まぁ、どんな信仰を持とうが、最終的には本人の自由だからね。私は敢て何も言わなかったけど・・・。

アビジャンの私の家から歩いて三分のところには、この宗教団体のコートジボワール本部がある。アビジャンに到着してから六時間後にはそれを既に発見したため、かなりドン引きしたのを今でもよく覚えている。生活が苦しい社会での宗教の力って・・・ここまですごいんだね。一見すると、ただの警備員つきの豪邸であるその建物には、夜になると、怪しい車がいくつも並んでいる。

さらにさらに、先日、近所の大学生のお兄ちゃん達とおしゃべりをしていたときのことだ。彼らは、大多数のマケレレ男子とは違い、かなりオープンな心の持ち主だ。何でも知りたがるし、新しい情報に対してものすごく寛容的だから私は好きだ。どうせ留学するなら、コートジボワールみたいに、人がオープンな場所に来ればよかたなぁ(←切実)。とにかく、彼らと話していて、宗教の話になった。その中には、生まれたときから自分は正式にはイスラム教徒だが、この年(二十三歳)になって自分なりの人生を模索するにあたり、今は様々な宗教について学んでいる最中だ、と言う男の子がいた。なんてリベラルなの!!!!すごい!!!!

彼は、当然仏教のことも知っているという。Hmmmm、待てよ?アビジャン在住で仏教を知っている?なんか・・・まさか。

そして、その「まさか」がビンゴした。彼は、例の日本の宗教団体流のお経を読み始めたのだ。この子・・・本当に頭がいいんだろうなぁ。

苦笑いするしかないが、彼がいつかは自分なりの答えに巡り合えることを願うばかりである。

アビジャンには、世界中からありとあらゆる宗教(カルト含む)が集まっている。それくらい、人々はオープンで新しい物好きなのだ。保守的なウガンダで暮らしていた私にとって、ここでの毎日は驚きと発見の連続である。

Jeune Afriqueの他にもパンアフリカニズム系のメディアはいくつもあるのだが、面白いのだとAfrique Asieという雑誌がある。これは、従来のように「アフリカと西洋社会」という位置づけで物事を見るのではなく、「アフリカとアジア」という、まさにこれからの関係に重点を置いた雑誌だ。でも、内容はやっぱい中東とアフリカに偏っている感はある。

Afrique Asie







さっきからフランス語のメディアについて述べてきたが、英語系だって負けていないよ。

Jeune Afrique グループは、英語でThe Africa Reportという経済・ビジネス系の雑誌も出している。これは、ウガンダにいた頃よく見かけた。同じく、 New Africanとかもいいね。Jeune Afriqueと同じで、やはりパンアフリカニズム系の雑誌だ。これはロンドンがベースとなっている。英語圏アフリカのストリートでは、よく売られているのを見たなぁ。ウィキピディアによると、現在の編集長は、中立的なパンアフリカにストになるために、ガーナ国籍を捨ててイギリス人になったみたいだよ。 New African Womanとかも売ってるから、日経みたいなものって言えば分かりやすいかな。


New Africanは英語圏アフリカのパン・アフリカニズム月刊誌。今月号の特集好きかも。

New Africanのフランス語版。内容は結構うすそう(翻訳版だし、しょうがないのかな)。
2ヶ月に一度発行されている。


The Africa Reportは、Jeune Afriqueグループによる英語での経済誌。
2ヶ月に一度発行されている。

これは、経済やビジネスを専門に扱った月刊誌。
New Africanと同じグループから出ている。



そして、そのフランス語版。2ヶ月に一度発行されている。


今日のイギリスは、フランスほど露骨にアフリカに介入していないので、BBCのニュースも割と信用できるような気がする。ラジオのBBC 国際放送はアフリカ報道をそれなりにやっていて(十分とはいえないと思うけど)、中でもBBC Network Africaは、アフリカのニュース番組だ。ウガンダ時代のルームメイトのヴィッキーがよく聞いてたなぁ。あの「♪BBC Network ア~フリカ~」っていう歌が未だに頭から離れない、そんな番組です(笑)。
彼女はマスコミを勉強しているから、色々参考になるんだろうね。BBCは、政情が不安定な国々で特に重宝されているという話をよく聞く。ホラ、政情が不安定な場所って、メディアも信用できなくなっちゃうでしょ?戦前戦中の日本みたいに。こんなとき、比較的中立的なBBCがあるのとないのとでは全然違うんだろうね。

BBCのすごいところは、ハウサ語スワヒリ語での放送も始めたところ。BBC Kiswahiliは、東アフリカでよく流れてました。さっきホームページ見てみたら、BBCにはソマリ語もあるんだね!!なんなんだ大英帝国、よく分からないけどとりあえずすごい。BBCの影響力が広がりすぎるのも危険だけど、大手メディアがより現地の人に身近になったら、世論はやっぱり変わるだろうね。情報は力だ。メディアが、大きな変化の渦中にあるアフリカにどんな影響を与えていくのか、これからも目が離せない。


オンラインのニュースサイトなら、AllAfricaもいいと思われます。こうしてみんなでアフリカマニアになりましょう~♪と言っている私もニュース読まなきゃ!!なかなか忙しいのと金欠で、そこまでの余裕がなくて・・・そんなときにも刻々と世の中は動いているし、焦る!!

1 件のコメント:

まゆシャン さんのコメント...

なっちゃん、すげー勉強になった!!!