2009年12月23日水曜日

「年上らしく、年下らしく」・・・って、何なんじゃい

先週の木曜日の朝、一緒に働いているマティーが、血相を変えて私の部屋にやって来た。

「ナツノ、あんた昨日、下のスーパーで一騒動やらかしたりしたでしょ?」

ビンゴ!!一騒動起こしましたが何か?

そもそもの話はこんな感じだ。

私のオフィスの真下にはスーパーがあるのだが、コートジボワール到着直後、チーズからワインからクロワッサンからペットボトルの飲み物まであるこのスーパーには、感動しっぱなしだった。「別に大きいスーパーでもないのに、なんなんだいこの品揃えは!!なんでペットボトルが冷蔵庫の中でいい感じに冷えているんだ!!(壊れているけど)どうしてエスカレーターもあれば、レジがパソコンで管理されているんだ!!す、すごいぞアビジャン、こりゃTInA(This is NOT Africa)だ!!」ってな感じにね。

ただし、やっぱりここも、低賃金でコキ使うのが得意なレバノン人経営のスーパー。接客の態度はありえないくらい悪い。客を睨みつけ、敬語も使わなければ、命令口調で「今ここにはお釣りがないから、誰か他の人のところに行きなさいよ。」という始末。コートジボワールの通貨であるCFAフランは、細かいお金が上手く社会の中にまわりきっていない。そんなんだから、お釣りがないと、キャンディーやらペンやらで小銭の代わりにされることもしばしば。そして極めつけは、客が買ったばかりの商品を、ぶっきらぼうに投げつけるの。

私は、何度もレジのおばちゃんの横柄な態度に抗議してるんだよ。まぁ、おばちゃんに抗議しても無駄だから、おばちゃん軍団を取り仕切っているマネージャーにも毎回文句は言うんだけど。当然おばちゃんには逆ギレされるワケでして。(象牙おばちゃんはかなり迫力があってさすがの私もひるんでしまいますが・・・最近では動じなくなったぜぃ、ouais!!)

コネがないと仕事に就けないここアフリカでは、マネージャーレベルの人間だと話にならない。そもそも従業員は、マネージャーよりも上の人とのコネで雇われていることが多いから、マネージャーも下手に彼らに注意できないの。だから、最終的にはオーナーに苦情を言わなければ意味がない。

そんなワケで、私はこのスーパーのオーナーとは既に顔見知りである。多分、要注意カスタマーのブラックリストに載っちゃってるね(苦笑)。彼はなかなかのアラビック・ジェントルマンで、いつもにこやかに誠実な対応をしてくれる。ただし、聞くだけ聞いておきながら、社内教育に私の声を生かすなんてことはまずありえないだろうけどね。そもそも社内教育などないし、しても無駄であることは彼が一番承知している。それに接客の質を向上させたところで、この辺一帯を独占しているのはこのスーパーだから、売り上げに何ら変化がないことは明らかである。

西アフリカにいるレバノン人やら東アフリカにいるインド人に代表されるような「上手にアフリカでビジネスをやっている外国人」というのは、売り上げさえあれば、あとは客のことなどなんとも思っていない人が多い。というか、ヒューマンマネージメントがメチャクチャ難しいアフリカだ。それは仕方がないといえば仕方がないことなのかもね。

悔しいかな。どんなにムカつく店でも、ここ以外に特に周りにはお店があるわけではないから、結局何があろうと私はこのスーパーで買い物をせざるを得ない。食べ物は路上で買うとしても、飲み物はここにないとないものが多いから・・・嗚呼悔しい。こうして、文句を言いながらもこのスーパーに通う日々だ。

ただし、このスーパーの警備員や裏方のおじさんたち、パンコーナーのおばちゃんなんかは、本当に親切でフレンドリーな人々なの。いつも彼らに挨拶をすると、自然とにこやかになっちゃうよ。よく、警備員のおじさんたちとは、一緒にお昼を食べながらジベタリアンをするんです、私。彼らのほうが、レジの仕事は絶対に向いているね。

レジのおばちゃんも、レジ以外の場所で会うと、すごくいい人たちなんだけど。挨拶だってちゃんとするよ(私からする場合がほとんどだけど)。やっぱりアフリカは全体的に、日常レベルから仕事レベルにまで持っていくのが難しいね。日常生活ではできることが、仕事になる途端にできなくなってしまうの。会社で働いていて、ますますその思いが強まる今日この頃。

ところで・・・先週の水曜日の騒動にはもう一人登場人物がおりまして。彼の紹介もさせてくださいな。

この子は十二歳くらいかな(本人に聞いてもよく分からないのだが)?毎日午前中に、このスーパーの前の道路で物乞いをしている少年がいる。典型的なストリートチルドレンだね。薬物におぼれた人に特有の目をした彼は、最初の一ヶ月間は毎日のように私に何かをねだってきた。「お姉ちゃん、お腹が空いたよぅ・・・」と、お涙頂戴のトーンでね。

一ヶ月くらい経ったある日、私は彼に、物乞いをやめるように説教(?)した。これが大人なら放っておくのだが、彼はまだ子どもだ。こんな年齢のうちから物乞いに慣れてしまっては、その後苦労するのは彼自身なのだ。ちなみにお節介なナツノさんは、あれちょうだいこれちょうだいとせがんでくる子どもに対しては、なるべくその場で叱るようにしているよ。だって、叱る人がいなくなっちゃうのが、その子の将来にとって一番の悲劇でしょ?叱るとね、だいたい周りにいる大人から感謝されるんですよ。「よくぞ言ってくれた。あの子のためにもこの国の未来にためにも、あなたが言ったことは必要なことだ。」ってね。

アフリカが変わるためには、まずは、次世代のメンタリティーが変わらなくてはいけない。いつまで経っても「自分は弱い」だの「自分は貧しい」だの言ってたって、ジーザスもアッラーも政府も助けちゃくれない。

この子のすごいところはね、私が叱った後、ピシャリと物乞いをやめたことなの。もちろん、他の人に対しては未だに物乞いを続けているけれど。物乞いをやめたと思ったら、なんとこの子、代わりに、いつも挨拶をしてくれるようになったの。それ以後、挨拶をしたり、天気の話をしたり、互いの健康を気遣ったりする、ちょっと奇妙な友情関係が続いている。私がマラリアから復活したときも、色々気遣いの言葉をかけてくれた。本当に優しい子。「今ならまだ遅くないから、彼が手遅れの年齢に達する前に何とかならないかなぁ。」と、お姉ちゃん(おばさん?)は密かに願っているのですが。

さてさて。先週の水曜日はね、そんな彼に少し早いクリスマスプレゼントを・・・と思って、スーパーで好きなお菓子を買ってあげることにしたんです。今まで一度もなにもあげたことがなかったけど、彼がいい子だから特別に。スーパーに一緒に入る前に、誤解を与えないように何度も説明をしたよ。そして、この子も分かってくれたようだったから、一緒にスーパーに入ったの。

もちろん、普段は親切な警備員も、みすぼらしい身なりの物乞いの少年と一緒に入店する私を見て驚いていた。実際に、彼らはこの子をいつもスーパー前の道路から追い出そうとしており、時には力ずくでかかることも。(まぁ、分かるけどね。)何人かの警備員は彼の入店を断ろうとしたが、私が事情を説明してなんとか許してくれた。他のお客さんもジロジロ見ていたけれど、特に何の問題もなしに、お菓子を選び終えた私たちは、レジへと向かった。

んで、やっぱり戦争勃発。象牙おばちゃんvs頑固な東洋人。今回は、その東洋人の傍らに、物乞い少年もおります。

まず、最初のおばちゃんは私たちを透明人間のように扱った。私たちの番が来たのに、後ろに並んでいるおじさんを呼んだのね。キーーーーーーー!!!「ちょ、ちょっと、ウチラが先に並んでたんだけど」と抗議したし、そのおじさんも「この二人が先だ」と言ったにもかかわらず、この第一おばちゃんは完全無視。そしていつものあの一言。「誰か他の人のところに行きなさいよ。」原因は、物乞い少年への差別意識だと私は考える。

二番目のおばちゃんは、ひたすら「お釣りがない」と言い張った。私たちが買おうとしていたのは450フラン分のビスケットで、2000フランで支払いをするつもりだったのだが。このババアのレジの中に十分なお釣があったことを、私は実は知っていた。それなのに、「お釣がない」の一点張り。

もちろん苦情バトルはスタート。「お釣ならちゃんとあるでしょ、嘘つかないでよ。第一、このスーパーのカスタマーサービスはどうなってるの?客は私たちなんですけど。それが、お金を払っている人に対する言葉遣いなの?」

この日は、私の連れに対するスーパー全体の態度が気に入らなかったから、いつもよりも早口&感情的に喋っている自分に気付いた。まるで汚物を扱うような態度!!私が連れてきた人に対して相当失礼だよね、だからといって、コートジボワールでは(というかアフリカ全体では)冷静さを失って感情的になってしまったほうが負けなのだ。

この二番目のおばちゃん(ジャイアンのママのアフリカバージョン)は、普段から一番態度がでかくてぶっきらぼうで、迫力で客を脅しているとしか思えないような人だ。だいたい、このスーパーのレジのおばちゃんと何かしら問題があるといえば、彼女との場合がほとんどだった。

彼女もこの日はイライラしていたようで、初めてマジギレされた。むくっと立ち上がり、人差し指で私を指さしながら、「今日という今日は許さないわよ。なんだいその生意気な態度は!!こんな汚いのまで連れて来て!!」と叫び、しまいには「十二時にスーパーの入り口に来な。決着つけようじゃないの!!!」と呼び出される始末。スケバンの喧嘩じゃないんだからさぁ。

彼女は、仲裁に入ったマネージャーすらも怒鳴りつけた。私も相当怒ってた。普段から彼女のことは気に入らなかったけど、子どもの目の前で、あんな大人気ない発言を普通はするかぁ?私の普通が普通じゃないのがTIAだし、彼女にしてみたら、物乞いを連れて来るなんていうのはイカれた人の行動なのだろうけど・・・。これは、文化や価値観の違いで片付けてしまえる事なのでしょうか?これって、差別というものなのではないのでしょうか?

とりあえず三番目のおばちゃんにお金を払ってスーパーを出たものの、なんだろうね、この後味の悪さ。悲しくなっちゃうな。とりあえずこの物乞い少年に一言謝って、私はオフィスへと戻っていった。

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だから、翌朝マティーに「ナツノ、あんた昨日、下のスーパーで一騒動やらかしたりしたでしょ?」と聞かれたとき、いかにも私が一方的に悪いというような言い方をされて、私としては腑に落ちなかった。ただ、「スーパーの女性を罵った挙句に手まで出したんだって!?」と言われたときにはさすがに反論したけど。

罵倒・暴力は、今回は封印していたのですが何か?こうして、話をいちいち針小棒大にするのが本当にTIA。何だって平気で言うんだからね、あることないこと。いちいち大げさなんだよ。ぶっちゃけ面倒くさい。

確かにウガンダ留学当時は、あまりにも話し合いの埒があかなすぎて(というか、相手がバカで意地悪で話し合いが成り立たなすぎて)、机をバーンとたたいたり、持っていた本を床に叩き付けたりすることもたまにあった。だって、そうでもしないと、本当にどうにもならないんだもん。こうでもしないと相手は話を聞いてくれないし、気がおかしくなってしまいそうになる。TIAな幼稚な話し合いは、リアルに神経がすり切れる。

あの頃の私は、まだまだTIA式の「ゲーム」(ひたすら忍耐と我慢を必要とする話し合い)に慣れていなかった。まぁ、今でも未熟なわけですが。だからこそこうして、スーパーのおばちゃんだとか警察なんかとすったもんだしちゃうんだよね。いつか本当に慣れる日が来るのでしょうかね。

ただし今回、ジャイアンのママ相手には、本当に何もしていません!!!!!殴りたい衝動に駆られたけれど、力じゃ絶対に勝てる相手じゃないのは最初から分かってるし。

もちろん、マティーには事情を全部説明したよ。同僚に誤解されてはたまったもんじゃないからね。でも、その後彼女から、非常に大切なことを教わった。

「ナツノ、いい?あなたが怒った理由はよく分かった。でもここでは、いくらあなたが客だとしても、いくら相手が態度の悪い店員だとしても、年下の者は年上の者に対して礼儀正しくなきゃいけないの。年上の者が絶対なの、分かる?」

そ、そんなの、日本だって一緒だよ。年上の人を敬う文化は日本にだってあるし、私だって、年長者には礼儀正しくありたい。でもこの場合、お金を払っているのは私なんだよ?ビジネスという観点から見れば、彼女の態度は全然プロフェッショナルじゃない!!それに、どう考えたって彼女の態度は幼稚だった。いくら彼女が身体的には年上でも、精神的にお子ちゃまなあんな人が、それでも絶対だと言うのか?ガキみたいな一つ年上の先輩すらもあがめなきゃいけない、日本の中学生じゃないんだからさ。

「でも、コートジボワールではビジネスもなにも関係ないの。ここでは、年上は年上らしく、年下は年下らしく振舞わないといけないの。」

・・・・。「ここではこうだ」と言われてしまったら、どんなに腑に落ちないことでも、外国人として、受け入れざるを得なくなってしまう。悔しいけど。

確かにコートジボワールに来た直後は、一番年下の私が「社内教育」をするというので、なかなか同僚から受け入れてもらえなくて大変だった。見くびっているわけではないけれど、「どうしてこんな小娘から何かを教わらなきゃいけないんだ!!」の視線は辛かったよ。とはいえ、私の同僚は全員24~26歳。そこまで歳が離れているわけじゃはないんだけどね。

「それから・・・これがもしも、あなたの家の近くのスーパーでだったら、どんなにやり合ったって構わないわ。ただ・・・。ただ、オフィスの近くで誰かと問題を起こすのは絶対にダメ。ここでは、みんながみんなを知っているでしょ。あなたがこの会社で働いていることも、私があなたと一緒にここで働いていることも、スーパーの彼女たちは全部知っているの。小さなコミュニティーなのよ、結局は。今日私がスーパーに行ったときに聞かれたわ。『おたくの会社はどういうつもりなの?』って。」

西アフリカのパリ」は、栃木県の田んぼの町と、同じ世界だ(苦笑)。

「彼女たちが、いかにして物事を大げさに言うのか、あなただってよく分かっているでしょ?実際にさっきも、私はてっきり、あなたが彼女たちに対して暴力を振るったものと思い込んでいたわ。いい?ここでは、誰か気に入らない人がいると、みんながあることないこと言い出すの。そうすると、だんだん彼らは、その気に入らない人の家族や職場に対しても何でも言い出すの。このままだと、スーパーのお客さんや彼女たちの周りの人に、私たちの会社の悪い評判が広まるのは時間の問題だわ。」

信じられない話だけど、マティー曰く、レジのおばさんの中には、私の母親が魔女であると言い張っている人もいるんだって。これが笑い話では済まされないのがアフリカ。魔女or魔女の子ども扱いされたら、もうかなりやばい証拠なの。魔女狩りは、(日本語情報はこちら)アフリカ全土で深刻な問題なんだよ。


そして・・・ここの人はとにかく噂話が大好き。マティーが言ったことは、確かに正しい。

日本でだって「友達の友達」くらいの話ならするだろうけど、ここでは「友達のいとこの夫の妹の隣人」レベルであれば、みんなが面白がってあることないことゴシップする。親戚の人数が多いし、みんな仲良しでしょ?近所の絆も深いしね。みんなおしゃべりが大好き(というか、みんなそこまで忙しくないから、おしゃべり以外にすることがない)&お節介。そして、みんなアフリカンなテキトーさを持ち合わせている。つまり、噂が常識ではありえないような形に膨らんでも、あるいは膨らませても、誰も気付かない&気にしないのだ。

また、噂がここで持つ力というのは、日本のそれとは比べ物にならないほど大きい。みんな噂を本気で信じて、また噂を情報源として生きている。新聞だって、噂の根拠を確かめないままに記事にしてしまう。信じられないけど、TIA。

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私一人の評判が下がるだけなら痛くもかゆくもないのだが、会社全体に迷惑をかけるわけにはいかない。そうか、ここでは「年上らしく・年下らしく」がキーワードで、どんな状況でもそれは守らないといけないのか。

悔しいけど、新しい視点を得たような気がする出来事だった。この事件以来このスーパーには行ってないけど、頭下げて謝ってこようかなぁ。自分のためにも、会社のためにも。ただ、彼女の「こんな汚いのまで連れて来て!!」発言は、どうしても許すことができない。

汚職のところでも書いたけど、自分にとっては理不尽にしか思えない状況の中で、グッとこらえて我慢する―これは今の私に一番欠けていることであり、今の私が一番苦手とすることだと思う。ウガンダ留学では「耐えること」の本当の意味を学んだが、仙人ではない私には、まだまだ克服するべき困難がたくさんある。

はぁ。異文化の中での生活は、それが何度目であっても楽じゃないね。どの文化的要素を取り入れて、どれを取り入れないようにするのか。取り入れたくない文化に対しては、どのように妥協すればいいのか。文化を取り入れない道を選んだ際には、どのようにして上手く周りの人とやっていけばいいのか。文化にも、変わらなければならないものと、伝承されなければならないものとあるしね。

C’est tellement difficile…..(マジ難しいぜ)

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