2009年11月12日木曜日

チョコレート・ベイビー


ベルゲンという町では、数ヶ月のマケレレ留学中にチョコレート・ベイビーを授かったイングリッド夫妻に再会することができた。アフリカ人と白人のハーフの赤ちゃんのことを、英語ではチョコレート・ベイビーと呼ぶんだけど・・・これって差別用語になるのかな。でも本当にチョコみたいな色の肌で、激カワだった!!この赤ちゃんの両親が彼のことを「チョコレート」って呼んでるから、ここではあえてその名称を使います。

ベルゲンの町並み。



マケレレに来ていたノルウェー人軍団が豪遊三昧な生活をしていたことは、前に少しだけ書いたが、中でも女子部は、3,4ヶ月のウガンダ滞在中、一人、また一人と面白いくらいに次から次へと現地人の彼氏を作っていった。しかも、ノルウェー組とつるんでいるようなウガ男は、カッコつけ&調子乗り乗りのどうしょもないダメセボ(セボ=男)ばかりだったの。白人の女の子とつるむのは、世のウガ男にとっては最高のステータス。ノルウェー組と仲がいいだけで、他のマケレレ男からは一目置かれる存在にのし上がれるというワケだ。おまけに、遊ぶ資金のほとんどは当然ノルウェー組女子部が出すものだから、そりゃぁもう、ハエが食べ物に群がるように、ダメセボがノル女組に戯れるワケですよ。しかも、そのダメセボの多くがノルウェー組のリピーターってのも笑える事実。彼らは、毎年ノルウェー軍団がやってくるたびに、彼らとつるんでいるのね。

私はこういうのは本当にダメなタチだから、豪遊にも数回しか参加しなかった。アフリカホールで暮らしていたから、アカムウェシに住む彼らと別行動をせざるを得なかったっていうのもあるけど。でも、昼間の彼らは別人だったから、結構仲良くしてたよ。マケレレという共通の敵がいたおかげで、異常なまでの団結力でした(笑)。

帰国した後のイングリッドから「チョコレート・ベイビーのママになるの!!」と初めて明かされたときには驚いた。え??あなた、ウガンダには4ヶ月もいなかったでしょ??彼女はそんなには豪遊に参加してなかったし、ノルウェー組の中では例外的に落ち着いている子だった。だから、そんな彼女にまでウガ彼がいたなんて知らなかった。

正直なところ、素直に「おめでとう!!」とは言えなかった。エイズが蔓延しているウガンダは、ノルウェーじゃない。軽率すぎたんじゃないのかな。それに・・・幸せそうな彼女には申し訳ないが、その彼とやらは、ビザが目的だったのではないだろうか。

ビザ目当てで外国人にアプローチしてくるウガ男・ウガ女にはうんざりしていた。ウガンダを「脱出」するためには、これくらいしか道がないのは分かるが、実際に自分がアプローチされるのはかなり屈辱的だった。一時は、カンパラ市内で見かける全てのウガ×ムズング(外国人)カップルに拒否反応が出てしまうくらいだった。「なにもそこまで・・・」と思ったそこのアナタには、一度マケレレで学生生活を送ってみてもらいたい。(ここの学生の間にこれでもかと言わんばかりに蔓延する嘘と、足の引っ張り合いと、cheatingと、うわべだけの人間関係。これらのせいで、留学中の私は本当に人間不信に陥った。あれはマジで苦しかった。マケレレを離れてから一年半になるけど、今でも思い出すと胸が苦しくなる。)

イングリッドの家に着いたとき、ピーター(チョコレート・ベイビーのパパ)は仕事で不在だった。赤ちゃんが生まれる一ヶ月前にようやくビザが取れ、今はスーパーの店員として働いているんだって。世界一の福祉政策のお陰で、一家は何不自由なく幸せに暮らしている。でも、ここまでの道のりは、決して平坦ではなかったようだ。

イングリッドが帰国し、すぐにウガンダとノルウェーのそれぞれの国でビザの手続きが始まった。パスポートを持っていなかったピーターは、それを取得するところから始めなければならなかったらしい・・・・が、ウガンダの役所がそう簡単にパスポートを発給するワケがないよね。事情が事情だったこともあって、意地悪な役人に何度も却下されたんだって。役人は、一国も早くノルウェーに行きたい彼の立場に付け込んだんだね。彼サイドには、お金持ちで身重のノルウェー人婚約者がついてるっていうのも知っていたから、わざとじらしてワイロを吊り上げようとしたのは明らか。一方のノルウェーでも、お腹の大きいイングリッドがビザ発給のために奔走しながらも、時間とお金だけが無駄に浪費されていった。まぁ、女の子を妊娠させるのって、アフリカ人の男がビザを取るためによく使う手口だから、政府が慎重になるのも理解できるけどね。

今まで知らなかったのだが、ノルウェーには、たくさんのタイ人の女の子が結婚目的でやって来るらしい。日本にもあるよね、地方の農家の嫁不足を解消するための、国際縁談制度みたいなのが。あれと同じようなものが、ノルウェーの田舎に住む年取った独身男性のためにもあるんだって。彼らは集団でタイに行ってお見合いをし、気に入った子を嫁として迎える。そして、そんな風にしてやってくるタイ人の子は、何の問題もなしにビザが簡単に取れるのだとか。

イングリッドがものすごく怒っていた。「世界で一番人権を尊重するはずの私たちの政府が、どうして結婚ビザに差別を取り入れているのかしら。小柄でinnocentな感じのするタイ人の女の子にはすぐにビザが下りるのに、アフリカ人の男だとそうはいかない。そりゃ、アフリカ人の男にビザ目的で利用される馬鹿なムズング女は多いけど、タイガールとノルウェーオヤジの結婚だって、お互いを利用しているだけじゃない。」

うん、確かにその通りかも。政府がこうせざるを得ない事情も分かるけど、これって結局のところ、差別以外のなにものでもない。

イングリッドとしては、結婚はしないで事実婚にしたかったんだって。さすが21世紀のヨーロピアンガールだね。だから、ビザも最初はフィアンセビザを申請したのだとか。でもそれだと、赤ちゃんが生まれる前にピーターがノルウェーに来るのは絶対に無理であることが分かり、仕方なしに結婚ビザに切り替えた。結婚と事実婚って、名称が違うだけであとは全部一緒なのに・・・役所っていうのは本当に面倒くさいね。そのせいで自分のライフスタイルを変えなきゃいけないのって、イマドキのノルウェー人にとっては受け入れ難いことだったに違いない。


チョコレート君。 かわいすぎるんですけど。



ピーターが帰ってきた。おお、なんか、思っていた人(チャラ男なダメセボ)とは少し違うぞ。彼は真面目で、優しくて、物静かで、頭も切れる。何よりも、数日間しか彼らの家には滞在しなかったが、彼が家族を心から愛しているのがよく伝わってきた。イングリッドも真面目で素直な子だから、お似合いのカップルだね。

元々は、彼女がとあるレストランでマケレレのダメセボ(彼女曰く、『あれは明らかにビザとお金目的で近づいてきた男だった』とのこと)に言い寄られて困っていたときに、助けてくれた店員がピーターだった。なんとも漫画みたいな展開だね。それがキッカケで仲良くなっても、ピーターは全然アプローチしてこなくて、最終的にはしびれを効かせた彼女のほうからアタックしたんだって。さすが、なんだかんだで彼女も肉食系ノルウェー女子なんだね(笑)。

なーんだ。私はてっきり、イングリッドがダメセボの罠にはまっただけなのかと思っていたから、少し安心した。

ピーターは、ビザ目的のダメセボと同等に扱われるのが一番嫌だと言っていた。「この結婚で幸せを手にしたけど、その分失ったものも多い」とも。例えば友達。彼のウガンダ人の友達のほとんどとは、彼がノルウェーに来た途端にお金やビザを求め出した。そのため、今では彼らとは距離を置くことにしたらしい。今まで親友だと思っていた人なんかも例外ではなかったみたいだけど、うん。これは確かに傷つくし、裏切られた気分にもなるね。また、幼いころからずっと一緒だった親戚の中にもそんな人は結構いるみたいで、これにも「失望している」と言っていた。こういう展開、めちゃめちゃTIAだ。気の毒としか言いようがない。

イングリッドは今、ウガンダ東部(ピーターの出身地)の子どもたちとノルウェーに住む子どもたちのために、教育プロジェクトを始めようと頑張っている。教育プロジェクトといってもありがちな援助活動ではなく、ウガンダとノルウェー双方の子どもたちの相互理解を深めて、一人ひとりの価値観を広げるための交流活動を目指しているみたい。

「マケレレに留学したお陰で、ウガンダの教育現場に一番欠けているものが『広い価値観で物事を見る』姿勢にあると痛感したの。でもね、帰国してみて感じたのが、ノルウェーの人の価値観こそ変わらなくてはいけない、っていうことなの。ピーターのビザの時もそうだったんだけど、ここにはまだまだ、アフリカに対する固定概念が根強く残ってるでしょ。」

すごいよイングリッド!!!何がすごいって、私も全く同じことを考えていたの!!!(ちなみに私は、少しでも日本人のアフリカに対する固定概念がやわらぐことを願って、このブログをやっています。え?逆に固定概念が強まってるって??きゃーん、ごめんなさい。)

ベルゲンで同じく再会したシリ。
彼女もマケレレ組だったんだけど、イングリッドと一緒に教育プロジェクトに奔走している。
めっちゃいい子。



「私たちのチョコレートには、ウガンダとノルウェー両方の立場から物事を見られる人に育ってほしいの。彼が大人になるころまでに、そんな風なものの見方ができる人が多く輩出されないと、さすがにこのままじゃマズイでしょう。ウガンダに対して固定概念を抱いているノルウェーは、いつまでも無駄な援助を行い続けるし、ピーターみたいな人をいつまでも拒み続ける。私たちはラッキーだったけど、絶対に他に悲しい思いをしている家族はたくさんいると思うの。同じように、ウガンダはウガンダで、『ノルウェー=お金』という色眼鏡でしか見られなくなる。これじゃ、いつまでたっても依存から脱却できなくなっちゃうよね。ウガンダの人だって、ノルウェーのムズングに頼ることばかりを考えたり、或いは利用したりしようとするだけだわ。」

超超超同感です。あまりにもビンゴなもので、ちょっと気持ち悪いくらいだけど(笑)。

イングリッドは数ヶ月前に、調査のためにウガンダへ行ってきたようだ。その間、チョコレートとピーターはお留守番。この家族、なんだかこれから色々やってくれそうな予感がする!!最初はあんなにひどい事を言って、申し訳ない気分でいっぱいだ。

私も頑張らなくちゃ!!ベルゲンから旅立ったとき、ものすごくすがすがしい気分になった。

0 件のコメント: