2009年10月13日火曜日

アビジャンの交通

平日の朝のラッシュアワー時に、私が住んでいるドゥープラトー地区からプラトー地区に行くためには、3つの選択肢がある。公共バス、ウォロウォロ(乗り合いタクシー)、それから個人タクシーだ。個人タクシーはオレンジの車体で、ウォロウォロの色はアビジャン市内の自治体によって、黄色や青、緑と色分けされている。この、色分けがされている時点で、「あぁ、ちゃんと交通制度が整備されているんだなぁ」と、アビジャン生活当初の私にとっては感無量だった。




朝の渋滞。黄色いのが、ドゥープラトーを循環するウォロウォロ。
ウォロウォロとウォロウォロの間に見えるオレンジの車が、個人用タクシー。



タクシーに乗ると、家からオフィスまでは片道1500フラン(約300円)かかる。当然、ふっかけてくるドライバーもいるので、乗る前には当然値段交渉をしなければならない。所要時間は、渋滞も入れて20~30分。しかし、雨が降ると極端にタクシーの数が減る。道路の質が悪いから、みんな運転したがらないらしい。市内の移動で、しかもアフリカで、片道300円は高すぎると私は思うのだが、アビジャンの物価は決して安いとは言えない上に、街はとてつもなく広いから・・・・給料の低いインターン生にはキツいけど仕方がない。どこの国にいようと、個人タクシーは極力避ける主義の私だが、仕事には時間通りに行かなければならないため、この街では妥協している。乗るときはアウアも一緒なので、割り勘できるのがせめてもの救いだ。




どこの国でもそうなんだけど、アジアやアフリカに行くと、運転手の宗教によって
さまざまなメッセージが車の内外至る所に溢れているんだよね。
Rien n'est tard si la vie se prolonge(=人生が延びれば、遅すぎるものなどなにもない。)
つまり、今まで通りのペースでやってても、長生きさえできれば、
それが遅すぎるかどうかの心配などしなくてもいい、ということ。
かなりアフリカンですな・・・笑


タクシーは、週末だと安くなる。普通逆だろー!!って話だけどね。週末は渋滞がないから、その分安いみたい。

私が一人で移動するときには、だいたいウォロウォロに乗る。アビジャンには10ものcommune(自治体)があり、一つ一つのcommuneだけでウガンダの首都より大きいのではないかと思わせるほどなのだが、ウォロウォロは、このcommune内の決まった道を走っている。路線バスの小さいバージョンみたいなものだ。

家からオフィスまでタクシーで1500フランかかる距離を、ウォロウォロなら一人当たり600フラン(約120円)で移動できるが、それでも高いなと私は思う。しかも乗換えをしなければいけないから面倒くさい。しかしこのウォロウォロ、結構ちゃんとorganizeされており、かなりTINA(this is not Africa)だ。

普通はcommune内のみを走っているウォロウォロだが、たくさんの人が働いているビジネスcommuneであるプラトーにはこれがない。ウォロウォロがプラトー内を循環していると、超非効率で生産性の低いビジネス街になってしまうからだ。その代わり、プラトーから別のcommuneに行くためのウォロウォロなら存在する。プラトーだけは特別に、ウォロウォロはcommuneの境界線を越えて走ってもいいことになっている。

プラトーに出入りするためのウォロウォロの車体は、黄色ではなくオレンジだ。これは、普段はタクシー運転手として働いている人が、時間帯によってはウォロウォロの運転手になるからだ。そっちの方が儲かるんだって。また、プラトー用のウォロウォロは、道で拾うのではなくgare(駅)と呼ばれるところで乗り込むのだが、それぞれの運転手は、gareにいるまとめ役の人にgare使用料を払うことで、プラトー用ウォロウォロとして走る権限が与えられる。

ウォロウォロで感動したのは、乗る前に値段交渉をしなくても、ボラれることは絶対にないことである。一定料金が定められており、しかもこの一定料金制度がきちんと実行されている。

その上、gareではラッシュアワー時に、アフリカとは思えない光景が繰り広げられる。なんと、ウォロウォロを統括する人々がgare内の交通整理をしているのだ。今までアフリカ各国の様々な交通機関に触れてきたが、このようなシチュエーションで交通整理をする人など見たことがない。普通は、それぞれのドライバーが自分の儲けのことのみを考えてやりたい放題やり、時たま存在するまとめ役の人は、昼寝をしているか友達とおしゃべりをしているかのどっちかなのだ。さすがアビジャン。信号機が信号機としての役割を果たしているだけある。

さらに感動することに、gareにいる彼らは乗客に対してきちんとした敬語が使えるし、それぞれの運転手が十分な小銭(お釣り用)を持っているかを確認し、足りない場合は両替までする。そうそう、アフリカって、いつも小銭が足りないんだよね。お店でもどこでも、「お釣りがないからウチでは買わないでくれ」と言われてしまうのはよくあることだ。

途上国では、交通関係者というのは『ぼったくる・失礼極まりない・うざい・嘘つき・カオスとストレスの原因になる』の五拍子が揃っているものだ(と私は信じている)が、どうやらウォロウォロに関しては少し違うようだ。

Gareで感動するのはそれだけではない。なんと彼らに先導され、次のウォロウォロが到着するまでの間、乗客が列に並んで待っているのだ。アフリカの人が・・・乗り物を待つ・・・しかも列に並んで!?その光景は、地下鉄を待つ東京のサラリーマンとほぼ変わらない。アフリカ名物の「席の奪い合い合戦(乗り物の到着とともに車内へダッシュし、席を確保する熾烈な戦い。敗北者は次の乗り物が来るまで、延々と待つハメになるからみんな必死)」で鍛えられた私には少々物足りないんだけどね。えへへ。




プラトー行きのウォロウォロを並んで待つ人々。
前回のアフリカ滞在で相当鍛えられた私にとっては、かなりのカルチャーショックでした。



おフランスかぶれしているアビジャン人のお気に入りの朝ごはんは、サンドイッチである。フランスで一般的にサンドイッチと呼ばれているのは、フランスパンに野菜やチーズをはさむタイプのものなのだが、それがアフリカンにアレンジされたものがアビジャンのサンドイッチだ。アフリカンにアレンジといっても、フランスパンに、好きな具(豆、油ギトギトの魚、アボガド、辛いヤギ肉炒めなど)を入れてもらうだけなんだけどね。それぞれの具には値段がついている。なので、パン代と具代を払えばOKだ。




サンドイッチのネタは、ご覧のとおり、結構アフリカンです。





このサンドイッチ、どこのgareに行っても必ず売ってるんだけど、排気ガスがとにかくひどいこの場所で作られても、あまり食べる気にはなれない。それでも、スーツを着たビジネスマンから通学途中の小学生まで、みんなに愛されている一品だ。



手際よくサンドイッチを作るお姉さんたち。subwayみたい。



ただしこのウォロウォロは、場所にもよるが、夜9時前にはほとんど見かけなくなる。終電ならぬ終ウォロが終われば、タクシーに乗るしかなくなってしまうのだ。また、アビジャンはとてつもなく広いため、目的地に着くまでに何度も乗換えを繰り返さなければいけない。渋滞がひどいこの街では、そんな乗換えなどしていたら、いつまでたっても目的地にはたどり着けない。

アビジャンの七不思議の一つは、月曜日の朝に必ず起こる、とてつもない渋滞だ。渋滞は毎日あるけれど、月曜日は街中が大パニックになり、道路のあちこちで怒声が飛び交う。タクシーやウォロウォロを見つけるのも一苦労。当然、交通は売り手市場になり、運転手はつっけんどんにとてつもない値段を要求してくる。だから、月曜日と火曜日は、値段交渉が上手くいかなくてもlaisser tomber(あきらめる)しかない。

これが水曜日あたりになるとだんだん落ち着いてきて、金曜日になると割と楽になる。どうして月曜日なの?と聞いても、誰もハッキリした答えは分かっていない。「c’est comme ça, à Abidjan.(アビジャンではこうなの)」らしい。だから私も、深くは考えないようにしている。

早稲田と一緒だね。四月は大学が混雑しているけど、ゴールデンウィーク明けになると一気に人が減る。

ウォロウォロのgareでは、運転手はgareで働く人に使用量を払わなくてはいけない。例えば、乗客一人当たりの運賃が600フラン(約120円)であるウォロウォロの場合、運転手が手にするのは600フラン×4人=2400フラン。そのうちの400フランが、gareの使用量として消えていく。

これだから、月曜日にウォロウォロのgareに行ってもなかなか車は見つからない。こんなに高い使用量を払うくらいなら、ウォロウォロではなくタクシーとして客を探した方が、採算が取れるからだ。だから、アビジャンのウォロウォロのgareでは、週の初めにもなると「仲間を探せゲーム」が行われる。

「仲間を探せゲーム」って知らないかな?よく、子ども用ワークショップのアイスブレーキングで使われるゲームなんだけど。ルールは簡単。例えば「誕生月が同じ仲間を五人見つけましょう」と指示されたら、とにかく周りにいる人に声をかけまくって、指示された通りの仲間&人数で構成されたグループを作ればいいのだ。

ウォロウォロ不足の週初めのアビジャンでは、行き先が同じ人を他に三人見つければいい。これで、めでたくタクシーを一台シェアできるというのだ。ウォロウォロを待っているのよりも早く、しかも上手くいけば、ウォロウォロよりも安く、目的地にたどり着くことができる。これね、なかなかいいよ。知らない人と友達になるいい機会だし。毎週同じ時間に出くわすメンツはだいたい一緒だから、「あ、ムッシュー・○○、今日も一緒にタクシー拾いますか?」なんていう会話もよくあるね。ただし、gareを切り盛りしている人は、当然怒ってしまうが。


仕事に行くためのもう一つの交通手段であるバスは、家からオフィスまでを300フラン(60円)で運んでくれる。しかも、定期券のような制度まである。どんだけ整備されてるんだ、アビジャンの交通。ただし、バスは本数が少ないうえに乗せてもらえる保証はなく、運転もトロいため、仕事に間に合うためには7時前には家を出て、平日の朝の埼京線並みのすし詰め状態に1時間ほど耐えなくてはいけない。ヒドイ乗り物には今までさんざん遭遇してきたが、このバスに毎朝乗るのだけはちょっと勘弁だ。これに乗って疲れ、嵐のような仕事に疲れ、なかなか思うように上達しないフランス語に疲れ、なんだかんだでTIAなコートジボワールでの生活に疲れていては、何のためにここに来たのか分かったものではない。




みんな黒いせいで見えにくいけど、朝の混雑時のバス。
後ろにもっとスペースがあるんだから、譲り合って詰めてあげればいいのに・・・
いえいえ、交通機関で譲り合いの精神なんか持ってたら、アフリカでは敗北します。
相手を突き飛ばす勢いで乗り込まなくては、生き残れないのです。
バスは、韓国の中古車が多いかな。



アビジャン市民はよくものを読むという話は以前にも書いたが、タクシーの中で、ウォロウォロを待っているときに、そして、バスの中でひたすら立ち続けながら新聞を読む彼らには感激する。大都市アビジャンと田舎町であるカンパラを比較してはいけないが、あちらではみんな、乗り物の中ではボケーっとしながら徒に時間を過ごしていたなぁ。まぁカンパラも、あれはあれで案外よかったんだけどね。




新聞を選ぶアビジャン市民。ものすごく典型的な朝の風景。



以上、上に書いた3つの乗り物の他にも、アビジャンには2つの乗り物が存在する。

ミニバスであるバカは、communeとcommuneの間を走る。プラトーに行くためのウォロウォロ同様、バカに乗るためにはgareに行かなければならないが、私が住んでいるドゥープラトーにはバカが走っていないから不便だ。




バカ




この国に来たばかりのころ、gareで迷っていたら「tu veux prendre le BAKA?(バカに乗りたいの?)」とおっさんに言われた。向こうは親切心から助けてくれようとしたのだが、私は「はぁ?バカですと?おっさん、今私になんて言った?」と聞き返してしまった。バカの存在を知らなかった私のほうがおバカであったと今では反省している。そのおっさんには、日本語でバカが何を意味するのかを教えたら、「やったー!!俺、日本語を話せるようになった!!えへへへへ」と大喜びし、さらにはこの世紀の大発見(?)を報告すべく、奥さんに電話までしてくれた。

また、カーと呼ばれる乗り物は、アビジャンから近郊の町に行くときに使われる。これは3列シートのおんぼろ車で、乗り心地は最高とはいえない。




カーの中身。
右から、おなじみアメリカ星条旗、
(真ん中の小さいのが)コートジボワール国旗、
お隣のブルキナファソ国旗。
なぜかここでは、どのウォロウォロもタクシーもカーもバカも、
コートジボワール国旗と星条旗でデコレーションされている。


土曜日は、1時間くらいブラブラと散歩をしてから仕事に行くようにしている。道端で果物を売っているおばさんや朝ごはんを食べている子どもたちとおしゃべりをして、なぜか住宅街に存在するバナナ畑の横を通り、新しい道を通ってみたりして、普段の自分の生活からは見えない部分のアビジャンを発見している。

やっぱり、自分の足が世界一の交通手段だね。

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