2007年9月7日金曜日

エチオピアの思い出2:アディス・アババでホームスティ

 「新しい花」を意味するアディス・アババという街を好きになるまでにそう時間はかからなかった。まず第一に、インドのような、あの頭痛を起こす車やリキショーのクラクション音がない。次に、気温が高くもなく低くもなく心地よい。埃っぽさもないために、非常に快適だ。インドのようなごちゃごちゃ感はなかったが、この街特有のエネルギーが満ち溢れている。人々は私を見てくるが、お金を見るかのような目で凝視されるのとはまったく異なり、親近感に満ちた視線であった。自然とこちらも笑顔になる。インドとの決定的な違いは、女性も洋服を着ているということだ。ムスリムやソマリ人の女性は布で体を覆ってはいるが、インド人のように、サリーを誰もが着ているわけではない。しかしながら、周囲の風景とは不均衡なほどピカピカの近代ビルが点在していたり、多国籍企業の看板(特にコークとペプシ)だけが大きく立派で目立っている様子を見ると、やはりインドとの共通性を感じずにはいられない。アディス・アババはとにかく広い。広いというよりも、だだっ広いという表現のほうが正しいかもしれない。なだらかな山々に囲まれたこの街は、とくに何かがあるわけでもなく、観光地としては魅力に欠けているかもしれない。今回のエチオピア訪問の目的が友人訪問であったこともあって、そんなアディスの普通の生活を一週間ほど体験した。

 8月の明け方は、息が白くなるくらいにまで冷え込む。砂糖とシナモンをどっさり含んだチャイから溢れる熱い湯気は、朝食前には欠かせないものの一つだ。サルワの家は市内中心地から車で約30分下ったところにあり、地理的にも経済的にも拡大しつつある首都の、ちょうど端の方にある。5人の家族と住み込みのお手伝いさんの、合わせて6人に対して寝室は2つ。家庭にはシャワーもガスコンロも車もないが、テレビでは世界中のチャンネルを見ることができる。エチオピアでは今、インド映画が一番ホットのようだ。そして、家族のお気に入りの番組は・・・『悲しき恋歌』(!!)。なぜ?と思いつつも、アラビア語版韓流ドラマに毎晩涙していたお母さんの姿は忘れられない。

 サルワは現在16歳。現在のエリトリアで生まれたが、生後まもなく、ジャーナリストとして働くお父さんの仕事の都合でアディス・アババに移り住んだ。エリトリアの独立をめぐって戦争が勃発したときには直接的には巻き込まれなかったが、国境が封鎖され、家族が離れ離れになってしまった。現在のエリトリアで暮らす母方の親戚には会ったことがないという。「未だに心は引き裂かれているわ」と話すのは、お母さん。エチオピアで新しい家族ができても、越えられない線のせいで、自分の母親の死すらも風の便りで知ることになってしまったという。それでも、ふるさとのことを話す彼女の表情は明るかった。生まれ育った村、何よりも美しいという紅海。この家族が、そろってそこのビーチで記念写真を撮る姿が目に浮かぶ。こんな日がいつ来るのだろうか。

 食事はもっぱら、インジェラが主食だ。インジェラとは、テフから作られるクレープのようなものだ。どの家庭に行っても、必ず一家に一台は「炊飯器」ならぬ「インジェラ器」が存在する。食卓の中心に置かれた大きなお皿にこれを拡げ、上に肉料理やシチューをかけて、手で混ぜながら食べるのだ。日本の鍋に似た雰囲気で、これがまた楽しい。一つの大きなお皿を家族全員で分けるため、子どもたちはここから、分け合いの精神を学ぶのだという。初めてインジェラを見たときの正直な印象は・・・小学校の清掃用の雑巾をなぜか思い出した(笑。エチオピアの皆様ごめんなさい!!)。食べ物には、見た目からなんとなく味が想像できるものとそうでないものに分けられるが、このインジェラは間違いなく、後者に分類されるだろう。酸味のややきいたクレープのような生地は、今まで口にしたどの味よりもユニークで、ハマリ出したら一日三回では足りないくらいだ。

 食事の後は、ブンナ(コーヒー)に限る。コーヒーのふるさとであるエチオピアでは、茶道(tea ceremony)ならぬcoffee ceremonyなるものが存在する。サルワの家では、近くに住むおばあちゃんがブンナを入れる。炭火を起こし、豆を煎るところから始めるために、ブンナをいただくまでには非常に時間がかかる。しかし、その途中で流れてくる、コーヒー豆の強い香りや、パチッという破裂音は、待ちわびる喜びを増幅させる。パリのカフェで飲んだコーヒーも、エチオピアの家庭で飲むブンナには到底かなわない。3杯のブンナを飲むのが決まりだが、最後の一杯が最も重要なのだとか。



* インジェラ豆知識*
エチオピアでは、生の牛肉をチリソースにつけ、インジェラで包んで食べる。生肉の食感とソースの辛味、解毒作用もあるというインジェラの酸味のコンビネーションは、寿司をほうふつとさせる。多くの外国人はお腹を壊すようだが、稀に安全な肉を提供する食堂もあるため、挑戦する価値は十分にある。

1 件のコメント:

Daoud さんのコメント...

なつのー、元気でやっているようでなにより!!このブログ、おもしろいし、まとまった量あるので読み応えあります!!
おれも出発したら書こうと思います♪
では引き続き頑張っていろんな事件に巻き込まれてね~、面白さ第一!体は第二!!たはっ♪